マイナビニュースより引用
みんな大好きスターバックス。
1971年にアメリカで誕生し、1996年に日本で第1号店出店。
最近は、スタバでカフェライフを楽しむのがステータスらしい。
そしてスタバといえば、ドリンクカップに「冠かぶったウェーブヘアの女」がデザインされていることが多いのだが、実はこの女性、ギリシャ神話に登場する怪物に由来しているのだ。
え?人じゃなくて!?
と思うかもしれないが、そう、怪物だ。
その名もサイレン(セイレーン)。
セイレーンが登場するのは吟遊詩人・ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』。
エドワード・アーミティジ作『セイレーン』
主人公のオデュッセウスが海を渡ろうとした時、必死に止める者がいました。
「海路を行くのはおよしなさい。この先には怪物が棲んでいて、生きて渡れた者はおりません」
冒険好きな英雄オデュッセウスは、そう聞いてますます行きたくなって訊ねます。
「ほぅ、それはどんな怪物だ?」
「はい。顔は美女なのですが、首から下は鳥の姿をしており、不思議な歌声で人々を惑わして海に飛び込ませ、ついには溺れ死なせてしまうのです。わしらは彼女たちを『セイレーン』と呼んでおります」
普通の人なら、ここで「それじゃあ陸路を迂回して行こう」と思うのですが、英雄ともなれば当然反応が違いました。
「なるほど、セイレーンか。それは是非とも聞いてみたいものだ……よし!」
一計を案じたオデュッセウスは、セイレーンの歌を聞いても海に飛び込めないように自分の身体を船のマストに縛りつけさせ、他の者は耳栓をさせておきます。
「さぁ、どんな美女たちが出迎えてくれるのかな?歌声も楽しみだ!」
怪物に会うのが楽しみとは、さすが英雄です。
かくして出航したオデュッセウス一行は、さっそくセイレーンたちの大歓迎を受けました。
セイレーンの数には史料によって諸説あり、メンバーそれぞれに名前があるようです。1匹じゃないんですね。
セイレーンのメンバー
- ヒーメロペー(優しい声)
- テルクシエペイア(魅惑的な声)
- ペイシノエー(説得力ある、という意味)
- アーグラオペーメー(美しい声)
- レウコーシアー(白、の意味)
- リゲイア(金切り声)
- パルテノペ―(乙女の声)
- その他
「ラララ~♪」
「おぉ……確かにこれはもっと近くで聴きたくなるぞ!ぐぬぬ……」
オデュッセウスは自分の意思とは無関係に、どうにか縄から抜け出そうと暴れ出し、周囲の者たちは必死でそれを縛りつけます。
「放せ……もっと近くで歌声を聴かせろ!お前たち、もっときつく身体を縛り上げてくれ!」
解放して欲しいのか、縛られたいのか一体どっちなんだ……オデュッセウスのとんだ道楽につき合わされながらしばらく経つと、セイレーンたちは次々と海に墜落していきました。
何でも、セイレーンは自分の歌声を聴いてまだ生きている者が現れた時、死ぬ運命だったということで、かくして海は平和になったということです。
めでたし、めでたし。
今の話を聞いても、
スタバのロゴって、いうほどセイレーンと似てないよな?
と思った人もいるでしょう。
実際、海洋技術の発達によって遠洋航海が可能となった中世以降、セイレーンの姿は近海の鳥から大海原の魚に変わっていきました。
尻尾が二つに分かれているのはそのバリエーションで、スタバのロゴもよく見ると両側に何か魚みたいな尻尾が伸びています。
言われてみれば、両側のアレは腕かと思いきやシッポだったようです。
で、そのセイレーンが何故スタバのロゴに採用されたのかと言いますと、人々を魅了した彼女たちにあやかって千客万来を期したそうです。
また、スタバ発祥のシアトルは港町ですから、海の守り神として親しみやすいマスコットとして選ばれたのでした。
ちなみに、スターバックスという屋号は、メルヴィルの海洋冒険小説『白鯨』に登場するスターバック一等航海士の名前から採用。同作に登場する捕鯨船ピークォド号の方が人気だったようですが、もしかしたら捕鯨反対者にも配慮したのかも知れません。(もしもスタバが「ピークォド・コーヒー」になっていたら多分読みにくいと思う)
併せてシアトル近郊にあるスターボ採掘場(レーニア山)も屋号の由来となったようで、厳しい肉体労働者の憩いとして親しまれています。
スターバックスの創立者によると、セイレーンについてギリシア神話は意識しておらず、ノルウェーの木版画に描かれていた姿をデザインしたそうで、現代では欧米各地に広く知られ、親しまれていたことが分かります。
あ、ギリシャ神話を意識していた訳じゃないのね・・・
という気もしますが、雑学の1つとして覚えておくのもいいでしょう。